赤い丘

日々の雑記。歯科医師。文学。哲学。酒。

文字の結晶

過去の自分がどう思っていたかそのとき、そのときの心情を詳細に思い返すことは難しいことが多い。過去の時点での微妙な心情を現在に再現するには、多大な労力を要するし、正確に再現することは実際、大変難しいといってよい。

それならば、昔の自分を現在に蘇らすにはどうしたらよいのか。僕は、日々の自分の記録を克明に文字に託するのが最も確実ではないかと思う。

僕は、作家や思想家、芸術家たちの日記などの告白を読むのが好きである。「ゴッホの手紙」や、ルソーの「懺悔録」は比類のない告白文学と評されるが、それは、読む者の心の中に深く染み入り、鮮やかに蘇るからである。

僕は、毎日日記を書いているし、定期的にブログに文字を綴っている。日々刻まれた言葉は、やがて結晶となる。それは、決して外から眺めるだけのものではない。深く、その言葉に接し、想像力を働かせると、その言葉は深く自らの人生と呼応するかのように納得されるのだ。結晶が自分の血肉になるのが実感されるのだ。